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第1部 戦闘機型MMS「飛鳥」の航跡 第7話 「轟兎」 ガチャガチャと武装をカチ鳴らせながら、何十体かの完全武装の武装神姫たちが砂地を歩く。 チーム名 「定期便撃沈チーム」 □犬型MMS 「クレオ」 Bクラス オーナー名「池田 勇人」♂ 22歳 職業 商社営業マン □天使型MMS 「ランジェ」 Aクラス オーナー名「大村 清一」♂ 25歳 職業 SE □イルカ型MMS 「ルーティ」 Bクラス オーナー名「川崎 克」♂ 19歳 職業 大学生 □エレキギター型MMS 「トリス」 Bクラス オーナー名「島本 雅」♀ 21歳 職業 フリーカメラマン □ヘルハウンド型MMS 「バトラ」 Bクラス オーナー名「合田 和仁」♂ 15歳 職業 高校生 □戦乙女型MMS 「オードリ」 Sクラス 二つ名 「聖白騎士」 オーナー名「斉藤 創」♂ 15歳 職業 高校生 □忍者型MMS 「シオン」 Aクラス オーナー名「佐藤 信二」♂ 19歳 職業 専門学校生 □サンタ型MMS 「エリザ」 Bクラス オーナー名「橋本 真由」♀ 17歳 職業 高校生 □騎士型MMS 「ライラ」 Aクラス オーナー名「橘田 和子」♀ 16歳 職業 高校生 □マニューバトライク型MMS 「ミシェル」 Sクラス 二つ名 「パワーアーム」 オーナー名「内野 千春」♀ 21歳 職業 大学生 □天使コマンド型MMS 「ミオン」 Bクラス オーナー名「秋山 紀子」♀ 16歳 職業 高校生 □フェレット型MMS 「スズカ」 Bクラス オーナー名「秋山 浩太」♂ 19歳 職業 専門学校生 □ウサギ型MMS 「アティス」 Sクラス 二つ名 「シュペルラビット」 オーナー名「野中 一平」♂ 20歳 職業 大学生 □蝶型MMS 「パンナ」 Bクラス オーナー名「田中 健介」♂ 19歳 職業 高校生 □剣士型MMS 「ルナ」 Aクラス オーナー名「吉田 重行」♂ 28歳 職業 電気整備師 □ハイスピードトライク型 「アキミス」 Bクラス オーナー名「狭山 健太」♂ 19歳 職業 大学生 松本「けっこう集まったな」 ヴァリアのオーナの松本は満足そうな顔をする。 大村がけげんな顔をする。 大村「相手は重装甲戦艦型神姫だって?大丈夫かな?」 ランジェがつぶやく。 ランジェ「やってみなければわからないでしょう・・・これだけ神姫が揃っているんです。負けることはないですが・・・相手も襲撃は予想しているはず、まともに戦うと、ものすごい損害が出ますよ」 忍者型のシオンが首をかしげる。 シオン「戦艦型神姫ってそんなに強いのですか?私は戦ったことがないので分かりません」 ルナ「私もないですね」 パンナ「私もだけど?」 アミキス「・・・・・・ちょっと、この中で戦艦型神姫と戦ったことある人」 誰も手を上げない。 スズカ「ネットの動画や画像で見たことあるけど、実際には戦ったことないです」 エリザ「大丈夫大丈夫ーたった1機でしょ?」 ライラ「大丈夫だよね?マスター?」 ライラの問いに橘田は一瞬、目をそらしそして、にっこりと笑った。 橘田「大丈夫、みんなでがんばれば勝てるよ」 ライラ「そうか!!わかった!!頑張るね!マスター」 橘田「・・・・・・・」 マスターが神姫に嘘をつく。 橘田は戦艦型神姫の恐ろしさ、強さを知っている。本当のことを言わない。 なぜか? 答えは簡単。神姫がびびるから・・・弱った戦艦型神姫、1隻、数十体の神姫で取り囲んで集中砲火を浴びせれば倒せないことはない、ただ、こちらもそれ相応の被害はこうむる。 橘田は、多少の損害はやむを得ず、何も知らない無垢な神姫たちに戦わせることにしたのだ。 バトラ「戦艦型神姫かー図体ばかりでかいだけの神姫だろ?」 ミシェル「・・・・どうでしょうか?とにかくあの強力な大砲の攻撃を回避しないと・・・」 オードリ「大丈夫です!動けないのでありましょう?問題ないです」 武装神姫たちはまったく何の警戒もせずにスーザンに近づいていった。 スーザンがレーダーで数十体の神姫が接近してくることを察知する。 スーザン「敵神姫接近中!なんだ?こいつら素人か?まっすぐこっちに来るぞ」 西野「連中、もう勝った気でいやがる」 スーザン「そうらしいですね・・・では、教育してやるか!」 西野「戦闘用意っ!!照準はこちらに任せろ、予測射撃だ!!」 スーザンの主砲が鈍い音を立てて旋回する。 西野「2連装ヘヴィ・ターボレーザー砲、出力70%!残りは電磁シールドに廻せ」 スーザン「復唱、2連装ヘヴィ・ターボレーザー砲、出力70%!残りは電磁シールドに廻します」 西野「VLSスタンダートミサイル発射用意ッー目標はこことここだ」 西野が筐体のタッチパネルを押して座標を指示する。 スーザン「装填よし」 西野「派手にいこうぜ、スーザン・・・・・・目標、敵MMS集団ッ!!主砲3斉射ッ!!!ファイヤッ!!!!」 スーザン「ファイヤッ!!!」 ズドズドム ズドドム ズドゴンッ!! ヘヴィ・ターボレーザー砲が轟音を轟かせ主砲から吹き上がる青白い発砲炎が灰色の巨体を鮮やかに浮かび上がらす。 ルーティ「んー?」 チカチカッと水平線の向こうから何かが光った。 川崎「どうした?ルーテ・・・・」 亜光速で放たれた強烈なレーザーキャノンの光が神姫たちを青白く照らす。 なぜ青白く光るのか理解できなかった。 光のほうがさきに届き、強力なレーザー本体が後から少し遅れて届くことを知ったのは、しこたま砲撃を喰らったあとだった。 クレオは眼を見開いた。 今まで喰らった一番強力な攻撃は天使型神姫 アーンヴァルのGEモデルLC3レーザーライフルの必殺攻撃「ハイパーブラスト」だった でも今、クレオの全身を青く照らしているこの光は「ハイパーブラスト」の数倍強い光で、しかも周りにいるみんな全員が青い光で包まれている。 このことの意味がどういうことか?理解は出来たが体が動かない 恐怖で動かすことが出来ないのだ 開いた口がふさがらない。 ドッガーーーン!!キュドン!!ズドッドドム!!ボッガアアーーーン!! 神姫たちの頭上に鉄槌のごとく降り注ぐ強力なレーザーの炸裂と周辺に巻き上がる青い灼熱の炎が容赦なく襲う。 トリス「うああ!!せ、戦艦型神姫の艦砲射撃だあ!!!」 佐藤「ど、どこから撃ってきているんだ!?」 大村「ランジェ!!何をしている反撃だ!!撃ち返せ!!」 キュウウウン ドンドゴオオッム!!! 突然の強力なレーザー砲撃に神姫たちはパニック状態に陥り、逃げ惑う。 ランジェ「むちゃくちゃ言わないで!!こんな状況で反撃でき・・・あ!!!」 ゾドッムゴーーーン!!!ドドム!!! ルーティがいる辺り一面は青い炎で埋め尽くされていた。 スーザンの主砲の直撃を食らって、バラバラに吹き飛ばされるルーティ。 □イルカ型MMS 「ルーティ」Bクラス 撃破 テロップが画面に踊る。 大村「うわああああああああああ!!ルーティ!!」 ぼとぼとと焼き焦げたルーティの残骸がバトラの上に降り注ぐ。 バトラ「ヒイイイイ!!」 スズカの顔面にルーティの粉々になった頭部がボトリと堕ちる。 「う・・・うえええ・・オエエエエ」 スズカは気分が悪くなりうずくまって嘔吐した。 島本「散開しろ!!一箇所にまとまっていると危険だ!!! 橋本「だ、駄目!離れ離れになると各個撃破される!!」 ライラ「わあああああ!!」 パニックに陥り、逃げ惑う神姫たち。 スーザン「命中!!命中!!」 西野「黒煙だ・・・命中したな・・・相手の神姫は即死かな?」 スーザン「連続射撃により砲身温度上昇中」 西野「交互撃ちに変更。撃て」 スーザン「ファイヤー!!!」 ズッズウウン 青白い噴煙が放出され強力なレーザーが発射される。発射された強力なレーザーはまっすぐ一直線に伸びていき神姫たちの集団のド真ん中に着弾 周辺にいた神姫を爆風で吹き飛ばす。 ドドム、ズヅッヅウーーン バウム スーザンは砲撃をまったく休めない。遠距離から強烈なレーザー砲撃を行い続ける。 レーザー管制とマスターからの的確な砲撃指示でメッタ撃ちにする。 これが多数の強力な火砲を有する戦艦型神姫の戦い方である。 そんな戦艦型神姫に何の策もなく、真正面から戦うことは自殺行為に近い。 アティス「みんな回避してください!!直撃を食らうと一撃で粉々に撃ち砕かれます!」 アティスは機動性に優れたウサギ型神姫だ。持ち前のフットワークで巧みに砲撃を回避する。 スーザン「!?何機か砲撃をすり抜けてきます!」 バッと砂埃を立てて、砲撃を掻い潜って数機の神姫がスーザンに急接近する。 戦乙女型MMS「オードリ」とサンタ型MMS「エリザ」マニューバトライク型MMS「ミシェル」ハイスピードトライク型 「アキミス」はジグザグに動き回って砲撃をよける。 エリザ「はははーこんなのおちゃのこさいさいだよ!」 オードリ「接近して取り付けば、あの図体です。なにも出来ません!!」 スーザン「ッチ!!接近されるとまずいな・・」 西野「VLSスタンダートミサイル発射、迎撃しろ」 スーザン「VLSスタンダートミサイル発射ッ!!!!!!」 ドシュドシュウオオオンン・・・・ 垂直にスーザンの右舷と左舷から中型のミサイルが8発、発射される。 狭山 「ミサイルッ!?アキミス!!回避しろ!」 アキミス「こなくそ!!」 アキミスはトライクモードになり、ミサイルを急旋回で回避する。 エリザは急上昇して回避。他の神姫たちも散りじりになって回避する。 スーザン「ミサイル、全弾不発!!」 西野「!!スーザン!!後方より敵神姫!!」 スーザンの後ろに回り込んだ忍者型MMS「シオン」が鎌をトマホークの様に投げつけた。 シオン「はああ!!」 西野「副砲放て」 鋭く命令しながらピッと手を振る西野。 ズズズンッ!! スーザンの後部ブロックにある2連装ターボレーザー・キャノンが1門、火を放つと同時にシオンの放った鎌を打ち落とす。 シオンはものともせず、バッとスーザンに飛び掛る。 シオン「取り付いてしまえば!!その砲塔は自分に向けて撃てまい!!」 佐藤はハッとスーザンの武装に気が付く。 佐藤「よせええ!!!シオン!!!そいつはSマイン付きだ!」 スーザンは後部からポオオンと小さな筒状の物体を打ち上げる。 シオン「え・・・・」 スーザン「バカめッ蜂の巣にしてやる」 S-マイン(S-mine,Schrapnellmine:榴散弾地雷)とは100年前に第二次世界大戦でドイツ軍が使用していた対人地雷の一つを神姫サイズにした武装である。 爆薬により空中へ飛び出して炸裂する、跳躍地雷(空中炸裂型地雷)の一種で、爆発すると320~350個の極小鉄球を半径約1mの範囲に高速度で飛散させることによって軽量級の神姫を殺傷する。 鈍重な戦艦型神姫は肉薄された神姫に、このような古典的な近接防御兵器で対抗した。 ドジャーーーン!!パンパッパパアン・・・ シオンの体を無数の極小の鉄球(ボールペン球)がつら抜いた。 至近距離でまともに喰らったシオンは蓮花弁のように小さなブツブツの穴だらけになってそのままピクリとも動かずに醜い屍を晒した。 □忍者型MMS 「シオン」 Aクラス 撃破 佐藤「シオンッ!!!うわああ!!」 佐藤はボロ雑巾のようになったシオンを見て絶叫する。 ぐちゃぐちゃになったシオンの残骸を見てエリザの顔から笑みが消えた。 エリザ「あ・・・いやあ・・・あああ・・」 橋本「エリザ!!!動け!!止まるな!!あ・・・」 スーザンの副砲がエリザをぴったりと照準につける。 副砲とは軍艦の備える大砲の一。主砲の補助として使用する中・小口径のもの。 ただし主砲に劣るとはいっても巨大な戦艦型神姫の副砲の威力は並みの神姫ですら、一発で粉砕するほどの口威力を有する。 スーザンは主砲の全砲門を、主力の神姫部隊に向けて砲撃し続けて、周りをうろちょろ飛び回る神姫を追い払ったり撃破するために副砲を持っていた。 西野「右舷にいるあのマヌケなツガルを叩き落せ。 スーザン「了解」 ズドオン!! エリザに向かって一直線に向かっていくレーザー弾。 マニューバトライク型MMS 「ミシェル」が叫ぶ。 ミシェル「エリザ!!」 ぐりっと強化アームでエリザの足を掴み、引き寄せる。 ズバッババンン!! 間一髪、エリザのいたところにレーザーが着弾しエリザは一命を取り留める。 ボーと口を半開きにしたまま、固まるエリザ。 ミシェル「エリザ!!!しっかりしなさい」 内野「あー、こりゃシェルショック状態に入っているわね」 ミシェル「シェルショック!?」 内野「砲弾神経症よ、友人たちの手足が一瞬にして吹き千切れるのを見、閉じ込められ孤立無援状態におかれたり、一瞬にして吹き飛ばされ殺されるという恐怖から気を緩める暇もないという状況で、感情が麻痺し、無言、無反応になるのよ」 ミシェル「・・・・・・詳しいんですね、オーナー・・・」 内野「まあ、戦艦型神姫と初めて戦った神姫はみんなこうなるわね」 ミシェル「・・・・・・・黙っていたんですね・・戦艦型神姫が強いってことを・・・」 内野は肩をすくめる。 内野「だって、戦艦型神姫がめちゃくちゃ強いっていったら、あんたたちビビって逃げるでしょう?」 にやーーーと冷たく笑う内野。 エリザ「あ・・・ああ・・・あうあうあ・・・」 ミシェルはぎゅっとエリザを抱きしめる。 ミシェル「私たちは逃げたりなんかしない!!」 凛と言い放つミシェル。 ズドドドドオン!! スーザンの主砲を喰らってバラバラに砕かれる犬型神姫。 □犬型MMS 「クレオ」 Bクラス 撃破 ミシェル「クレオが!!」 スーザン「命中!!命中!!」 西野「ふん、雑兵どもが!!あの這いつくばっている神姫を狙え、低く狙え、地面ごと抉り飛ばせ!!」 ライラはうっすらと眼を開ける。 地獄だった・・・バラバラに吹き飛ばされたルーティだったものの残骸がブスブスと音を立てて散らばり、地面は艦砲射撃で穴だらけ、さきほどの砲撃でクレオは吹き飛んで焼き焦げた何かがバラバラと地面に落ちてくる。 両足を失った天使型MMSの「ランジェ」が獣のような声で啼いている。 ランジェ「ギゃアアアアアアアアアアアアッ!あ・・・ああ・・・アアアーー・・・うあああああああああ」 バタバタと地面をのたうち回るランジェ。 それを呆然と見ているヘルハウンド型MMSの「バトラ」。半開きになった口元からは涎が垂れている。 バトラ「・・・あ・・・うあ・・・・・」 エレキギター型MMSは「トリス」は、爆風でちぎれ飛んだ自分の右腕を左手に持ってうろつく。 トリス「手が・・・手がァ・・・ああ・・・取れた・・・手が・・・」 フェレット型MMSの「スズカ」は嘔吐し続けて、地面にうずくまって動こうとしない。 スズカ「うおおおお・・おええ・・むぐ・・・おえええ」 ボチャボチャと粘質を含んだ油の塊がぶちまけられる。 その光景を見て、ライラは確信した。 自分たちは囮に使われたのだと、真正面から戦艦型神姫の強烈な艦砲射撃について何も知らされずに、ノコノコと前に出てきたのは、ミシェルたちを突破するための支援に使うための囮だってことに・・・ ライラはマスターを呼び出す。 ライラ「マスター!?マスター!!?」 橘田「どうしたのライラ?」 ライラ「・・・仲間が・・・やられました・・これ以上の戦闘は不能です」 チカチカっとまた青い光が光る。 ドズウウオオン!! 地面を抉り飛ばしてランジェがぐちゃぐちゃになって飛び散る。 □天使型MMS 「ランジェ」撃破 ライラ「・・・・・どうして、黙っていたのですか?」 橘田「大丈夫、みんなでがんばれば勝てるよっていったよね?そういうこと」 ライラ「・・・囮にしましたね」 橘田「大事なのは勝つことだから。僕に言わせれば、 勝利に犠牲はつきものですよ。ってテニプリの聖ルドルフ 観月さまも言ってるよーライラも賛同していたじゃない」 ライラははっと思いだす。 そういえばそんなことを橘田と一緒にテレビのアニメで見ていたような気が・・・ 橘田「でしょ?やっぱりさーそういうことは、実戦してみないとさーほら・・・マンガと実際は違うっていうし、行動しないとさ・・・言葉にも重みって出てこないし」 ライラは呆然と立ち尽くす。 勝利に犠牲はつきもの マンガやゲーム、映画、小説などで幾度となく使われてきた言葉。 その本当の意味を、実際に目の当たりにしたときに寒気が走った。 この言葉の意味は、・・・こういう意味だったとは・・・ スーザン「命中!」 西野「目標!!増せ一つ!次はこいつを狙え」 ライラ「・・・・・・マスター・・・」 橘田「なあに?ライラ」 スーザン「2連装ヘヴィ・ターボレーザー砲、ファイヤ!!」 チカチカっとまた青い光が走る。 ライラの顔をぼうっと怪しく照らす青い光。 ライラはなにかつぶやいたが・・・橘田はうまく聞き取ることが出来なかった。 ズズン・・・・ スーザンが目視で確認する。 西野「黒煙だ・・・命中したな」 スーザン「・・・・・・・・・敵機撃破!!」 □騎士型MMS 「ライラ」 Aクラス 撃破 To be continued・・・・・・・・ 前に戻る>・第6話 「重兎」 次に進む>・第8話 「爆兎」 トップページに戻る
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『 』 Ver2,0 【レベル】( ) 【Type】( ) 【射撃値】( ) 【格闘値】( ) 【反応値】( ) 【知性値】( ) 【戦闘基本値】 『射撃基本値』 【射撃値】( )+【キャラクターレベル】( )+【神姫基本値】( )+【射撃修正】( )=( ) 『格闘基本値』 【格闘値】( )+【キャラクターレベル】( )+【神姫基本値】( )+【機体修正】( )=( ) 『回避基本値』 【反応値】( )+【キャラクターレベル】( )+【神姫基本値】( )+【回避修正】( )=( ) 『旋回値』 【基本旋回値】( )+【キャラクターレベル÷10(切捨て)】( )=( ) 『特殊』 【その他の数値】 『ヒットポイント』(HP) 【基本HP】( )+【キャラクターレベル×2】( )+【その他修正】( )=( ) 『イニシアティブ基本値』(IV) 【反応値】( )+【キャラクターレベル】( )+【その他補正】( )=( ) 『サバイバル・ポイント』(SP) 【キャラクターレベル】( )+5+【その他補正】( )=( ) 『タクティカル・ポイント』(TP) 【知性値】( )+【キャラクターレベル】( )+【その他補正】( )=( ) 【技能】 《 》 《 》 《 》 【基本性能】 【射撃値】( ) 【センサー性能】( ) 【速度】( ) 【格闘値】( ) 【装甲値】 ( ) 【旋回】( ) 【回避値】( ) 【HP】 ( ) 【パワー】 ( ) 【格闘武器】 名称 /威力/格闘補正/使用回数 【射撃武器】 名称 /威力/~5/~10/~15/~20/使用回数/間接/連射 【カスタムデータ】 【部位】 /【CP】/ 【名称】 /【効果】 頭部 / ( )/ / 胸部 / ( )/ / 脚部 / ( )/ / 背部U / ( )/ / 腕部 / ( )/ / 武装 / ( )/ 計 /( ) 『安定性』 【カスタム合計値】( ) - 【キャラクターレベル】( )+5=( )+1=安定性( ) 【予備武器・弾倉】 【予備武装】( ) ( )用マガジン ( )用マガジン 【サイドボード】 【サイドボード収納武器】( ) ( )【サイズ】( )×( )=合計( ) 【追加ラック武装】 【追加ラック数】=( ) ( )【サイズ】( )=【容量】( ) ( )【サイズ】( )=【容量】( ) ( )【サイズ】( )=【容量】( ) ( )【サイズ】( )=【容量】( ) 【合計使用数】=( )
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SHINKI/NEAR TO YOU Phase02-3 『さあ! 今年もやってきました神姫センター春の祭典、マヤノスプリングカップ! 先日行われた一般トーナメントに続き、子どもの日である本日は小中学生によるジュニアトーナメントが開催されます。若人たちが熱きバトルを繰り広げるこのトーナメント、今年は第一試合から注目の参加者が登場だぁっ!!』 マイクを持った司会者はそこで一拍置くと、筐体の一角にスポットライトが当たる。 『当神姫センター注目の上位ランカー! 女子中学生にして総合ランキング6位の実力者、伊吹舞とその武装神姫、マオチャオのワカナだぁぁぁっ!!』 筐体のシートに腰掛ける伊吹とエントリーボックスに立つワカナの姿が、ライトに照らされながら手を振る。周りの観衆から送られる盛大なエール。 その光景をシュンは隣のシートから、あっけに取られて眺めていた。 「伊吹とワカナ……すごい人気だなぁ」 「ランキング上位者で、優勝候補ですからね。当然ではないでしょうか?」 「……まあね。その代り僕たちは完全に空気だけど……」 続いて司会者がシュンとゼリスを紹介するものの――伊吹のクラスメイトである新人マスターとその神姫、程度の簡素なものだった。 ゼリスがジュニアトーナメント参加者にしては珍しい、オリジナル武装タイプであることがちょっと関心を集めたようだが……観衆の興味は完全に伊吹とワカナに集中している。 もっとも、それで言ったら可哀相なのは対戦相手の方か。 向こうも中学生同士のコンビらしいが、ガチガチに固まって完全に緊張している。……まあ、一回戦から優勝候補と当たってしまったんだから当然かもしれない。 だからといって、同情している暇はない。シュンだって公式大会は初参加だし、ゼリスはオーラシオン武装で初の実戦だ。遠慮なんてしている余裕はない。 ゼリスとワカナ、そして相手の神姫二体が筐体にエントリーしていく。 その間に、シュンは伊吹と簡単な作戦会議を済ませる。 「まずワカナが前衛に出るから、ぜっちゃんは後衛についてサポートよろしくね?」 「リョーカイ。それでいいよな、ゼリス?」 「はい、問題ありません」 シュンに頷き返しながらゼリスがバトルフィールドに出現する。オーラシオン武装の白い装甲が、ライトに照らし出され美しく映える。 4体の神姫がそれぞれフィールド上に配置される。 『REDY GO!』の合図で試合が始まった。 「いっくよ~っ!」 試合開始と共に、ワカナが相手に向かって突進していく。 ふいを突かれた相手の神姫――二体の天使コマンド型ウェルクストラが慌てて散開する。 「ワカナっ、左の相手に攻撃よっ!」 左に逃げた一体がバランスを崩した隙を見逃さず、伊吹の指示に従ってワカナが装甲一体式のナックル――裂拳甲(リークアンジア)ですかさずラッシュをかける。 防戦一方になる仲間を援護しようと、もう一体のウェルクストラがサブマシンガンを構える。が、それを別方向からの銃撃が阻む。 ハンドガンを構えたゼリスが、的確な射撃で相手の動きを封じていた。 「よしっ! ゼリス、そのまま牽制だ」 「どちらかと言えば、私も接近戦の方が好みなのですが……」 「おいおい……慣れない武装でいきなり無茶しようとするなよ」 渋々といった様子で、ゼリスは指示通り相手の一体と距離を置いての射撃戦を開始する。 ウェルクストラのアルヴォPDW11に比べ、ゼリスの使っている専用ハンドガン"エスぺランサ"は連射力で劣る。しかし、ゼリスはフィールドの遮蔽物を巧みに利用しながら互角の撃ち合いを演じていた。 新武装の調子も、今のところは特に問題無いようだ。 撃ち合いを続けながらゼリスはウェルクストラを徐々に誘導し、仲間と分断させる。 相手が気がついた時には、すでに離れたもう一体のウェルクストラはワカナの猛攻にさらされてKO寸前となっていた。 こうなってしまえばもう、勝負は決まったも同然だった。 試合開始から1分後―― 『これはつよぉぉぉいっ!! ワカナ&ゼリスチーム、怒涛の攻撃で相手チームを連続OK! 優勝候補が見事、初戦を圧勝で飾ったぁ!!』 シュンたちは危なげなくトーナメント一回戦を突破した。 * トーナメント大会は神姫センター5階のアミューズメントフロアが会場となっている。 このフロアの一角には神姫に関する講習会を開くためのセミナールームもあり、そこがトーナメント参加者の控え室となっている。 一回戦を終えた後、シュンたちはそこでゼリスたちのコンディションをチェックしていた。 「ふう~、パーツはどこも問題無さそうだな」 「シュン。問題が無いのなら、次はもっと積極的に攻めてはどうでしょうか?」 「……ダメだ。それでトラブルが発生したらヤバいだろう」 シュンにたしなめられ、ゼリスは「むぅ~~」と不満ながら一応納得する。 現状では、まだ不安が残るオーラシオンの肩アーマーパーツ。姿勢制御とメインスラスターを兼ねるこのパーツこそ、ヒット&アウェイを主体にした機動戦での要になる。 万全でない状態で全開戦闘を行って、もし不調を起こしでもしたら……たちどころに窮地を招く結果となるだろう。 「大丈夫よ、ぜっちゃん。このくらいの大会ならワカナだけでもラクショーよ。心配しなくてもオーケーオーケー♪」 伊吹は呑気にモニターで他の試合を観戦しながら、余裕の表情をしている。その隣のクレイドルでは、ワカナがさっそく昼寝タイムに入っていた。緊張感のないコンビだなあ…… 本物の猫みたいにゴロゴロ眠る姿からは、このワカナが一回戦で嵐のようなラッシュで一体目を倒し、二体目もあっという間にノックアウトしてしまったスーパーファイターとは思えない。 能ある鷹は――もとい、猫は爪を隠すってやつか? 最後のフィニッシュは研爪(ヤンチャオ)で決めてたし。 「ふむ……確かにワカナさんの強さなら、私たちはバックアップに徹するだけでも勝ち進めるでしょうね……」 同意しつつ、ゼリスの口調はいつもと違って歯切れが悪い。 「ゼリス。思う存分戦いたいだろうけど、もうしばらくは我慢してくれよ。せめてユウが来るまではな」 由宇がゼリスのメカニックについて、最終的な調整をしてもらえば後は思いっきり戦っても大丈夫だろう。 そのためにも、しばらくはこのまま堅実に戦ってデータを集めないと。それになんだか今のままでも、伊吹とワカナだけでトーナメントを勝ち進めそうだし…… (下手にリスクを負うこともないよな。このまま勝ち進めるならそれでも……) そこまで考えて、シュンは何か胸につっかえるものを感じる。 なんだろうこの感覚は。このまま何もしないで勝ち上がれるなら、問題はないはずなのに。 ……何もしなくても? 「シュン……シュン!」 ゼリスに袖を引っ張られ我に返る。 気がつくとゼリスがジッとシュンを見上げていた。澄んだエメラルドの瞳に見つめられ――シュンは気まずくなって目を反らす。 「シュッちゃんどうしたの? 急にボーっとしちゃって……」 「なんでもないよ。えっと……喉が渇いたから、ちょっとジュース買ってくる」 不思議がる伊吹にとっさに言い訳をしつつ、シュンはその場から逃げるように席を立った。 控え室のドアをくぐると、トーナメント会場の歓声がここまで聞こえてくる。 あたかも試合の熱気までそのまま伝わってきそうだ。こうして外野から眺めてみると、さっきまで自分もいたはずのその場所が――まるで別世界のように感じらる。 群衆の中を歩き、シュンは一人考える。 このままシュンが何もしなくても勝ち進める。 試合は伊吹とワカナに任せればいい。特に指示を送らなくても、ゼリスはバックアップくらい無難にこなすだろう。あとは由宇の武装の調整がうまくいけば、何の問題もない。 ――それで? 問題なかったとして、その中でシュンは何をしたと言えるのだろう。そんなんでゼリスのマスターって言えるのか? 僕には一体、何ができるんだ――。 (僕はゼリスのマスターであっても、ひょっとしてあいつにとっては必要な存在じゃない……のか?) 伊吹とワカナはもちろん、由宇もゼリスもすごいヤツラだ。一緒にいるシュンだからこそよく分かる。 でも……彼女たちに比べれば、自分は何もできない凡人に過ぎないのではないだろうか。 考えれば考えるほど思考がマイナスになっていく……。 シュンはまとわりつく不安を振り払うように、強く頭を振る。 (とにかく今は次の試合だ。こんな気持ちのまま周りの足を引っ張っりでもしたら、余計にダメダメじゃないか) シュンは強引に思考を切り替える。みんなのところに戻ろう……そう思い、踵を返したところで気がつく。 あ……そうだ。一応ジュースを買って帰らないとおかしく思われる。伊吹はあれでなかなか鋭いし、ゼリスもなんだかんだで敏感にシュンの気持ちを察してくる。心配をかける訳にはいかない。 自販機は確かフードコートにあったはず――くるりと振り返ったところに、いきなり何かが激突した。 「うぎゃ~~っす!!?」 シュンが驚きの声を上げるより先に、甲高い悲鳴が聞こえてきた。 顔を上げると、目の前に武装神姫を連れた少年が転がっていた。どうやら彼がシュンにぶつかってきた相手らしい。 転んだ拍子に打った膝の痛みに顔をしかめつつ、シュンは立ち上がりながら少年に手を差し伸べる。 「えっと……君、大丈夫?」 「おっと。こりゃ兄ちゃん、すんまへんなあ」 彼の手を取って関西弁の少年が立ち上がる。 シュンと同年代か少し下くらいだろうか? 快活そうな男の子だ。 「ごめんな、兄ちゃん。オレこっちの神姫センターは初めてでな~。ちょっと迷ってもうて、急いでたんや」 「なるほどね。でも人が多いところでは、あまり走ったりしない方がいいぞ?」 「うん、これから気をつけるわ!」 シュンが注意すると少年は素直に頷いた。……うんうん、元気があって大変よろしい。 妹がいるせいか、年下の相手にはついつい兄貴ぶってしまうのがシュンの癖だった。 「あかんわっ、大丈夫かフッキー!?」 フッキーと呼ばれた少年を心配するように、肩に乗る彼の神姫――寅型MMSティグリースが騒ぎ立てる。 どうやらさっきの悲鳴も、この神姫のものだったらしい。 「心配あらへん。こんなんちょっと転んだだけやし」 「せやかてフッキー! アンタ耳たぶがこんなに大きく腫れ上がってしもうて……」 「アホかっ、この福耳は生まれつきやっちゅーねん!」 突然始まったボケとツッコミの応酬に、あっけに取られるシュン。 ……なんだこのふたり。神姫とマスターでお笑いコンビでも目指してるのか? シュンの様子に気がついて、関西弁の少年――フッキーが照れ臭そうに笑う。 「あ~、すんまへん。こいつ気がつくと、すぐ今みたいにボケ始めてな~。ホンマ誰に似たんやろうね?」 「マスターのアンタに決まっとるやんっ!」 ビシッとツッコミを入れるティグリース。ダメだこのふたり。放っておくと、いつまでも延々漫才トークを続けそうだ。 「あの……コントの最中に悪いけど、君たち急いでたんじゃないのか?」 シュンが指摘すると、フッキーとティグリースはハッと気がついて慌て出す。 「そやった、オレら急いでるところやったんや!」 「あかんでフッキー……早くせんと遅刻してまうで?」 「おお、そんなんなったら怒られるで。じゃあな、兄ちゃん。またどっかで会おうな!」 早口で捲し立てると、少年と神姫はすぐさま人混みの中に消えていった。 シュンは笑いを堪えつつ、そんなふたりに手を振って見送る。 やれやれ……何というか慌ただしいコンビだった。お蔭でさっきまでいろいろ滅入っていた気分が吹き飛んでしまった。 なんだかスッキリした気分で、シュンは控え室に戻る。 彼がジュースを買い忘れたことに気がついたのは、そのことをゼリスに指摘されてからだった。 ▲BACK///NEXT▼ 戻る
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昔々。と言っても何百年、何十年も前ではなくて数年前くらい昔の話。ネットバトルにとても強いアーンヴァルが居た。名前はアルテミス。奇しくも公式大会で優勝したアーンヴァルと同型同名の神姫。今のところ因果関係は一切不明だけど兎にも角にもネットバトルにアルテミスという名前のとても強いアーンヴァルが居た。 アルテミスは試験的に作られたAI 「アルテミス・システム」が搭載された神姫であり、その強さの秘密は既存のAIを遥かに上回る学習能力にあった。具体的に言えば戦えば戦うほど強くなる某戦闘民族のような神姫だったらしい。その戦いっぷりから今では伝説の武装神姫とまで語り継がれていて、頂点に立っていたアルテミスよりも強いと賛辞する人も少なくはない。 伝説のアルテミスのチャンピオンのアルテミス、どちらが強いのか、その試合は今も成立していない、というのも伝説のアルテミスはある日突然バトルを止めネット上から姿を消してしまったからだ。噂によると「アルテミス・システム」は開発した研究者達の予想を上回る成長を遂げた為に破棄されたと言われている。高過ぎる学習能力を持ったアルテミスが将来人類を脅かしかねないと判断されたんだろう。 伝説のアルテミスが活躍していた当時、僕とイシュタルも神姫バトルをやっていたにも関わらず伝説のアルテミスと出会う事も戦う事もなかった。何故かは分からないけどアルテミスはネットバトルばかりをしていてイシュタルは臨場感の有るという理由でリアルバトルばかりしていたからだ。 「アルテミス・システム」はAIに限りなく人に近い能力を持たせる事を目的とされて作られた。そんなAIを持っているアルテミスと僕が知る限り最高の神姫であるイシュタル…この二体が出会ったらどうなっていたか。最早それは叶いそうない夢ではあるけれど心の何処かで願ってしまう。何処かでアルテミスと出会いたい、どんな形でもいいから出会わせたいと。 「―――もしもし?」 『やぁ、白太くん』 神姫狩りにイシュタルを誘拐されエルゴに迷子のマオチャオを送り届けてから三時間後。エルゴで買ったばかりの本を読んでそんな物思いに耽っていたところに電話を掛けてきたのは日暮店長だった。 「店長? あ、もしかしてイシュタルが見つかったんですか?」 『見つかった。確かに見つかったんだが…』 「良かった! 心配で家に帰れなかったんです、直ぐにそっちに行きますね!」 『いや、来なくていい。…その、何だ。君は口は固い方だったかな』 「え? …まぁ、それなりには」 日暮店長の歯切れが悪い。何か起きたのだろうか、でも何が起きたのかが分からなくて曖昧に頷くことしか出来ない。少しして日暮店長は重い口調で語り始めた。 「落ち着いて聞いて欲しい。今イシュタルは殺人事件の現場に居合わせた神姫として警察に没収されている」 「…殺人事件? 現場?」 「被害者は若い男が二人と若い女が一人。君を襲った神姫狩りだ」 殺人事件、現場、被害者、なんてテレビの向こう側でしか使われない言葉が、今正に僕の耳元で、日暮店長の口から跳び出て重く圧し掛かってくる。 「もしかしてイシュタルが疑われてるんですか」 「いや、犯人は神姫狩りが持っていた神姫だと聞いているが、これ以上は調査待ちだ。兎に角、警察からイシュタルは俺が引き取るから今度こそ君は家に帰るんだ」 「分かりました…」 そして一方的に通話を切られる。説明が足らなくてイシュタルを取り巻く状況が全然分からなくて納得が出来ないけど日暮店長に力強く帰宅を促されたので納得するしかない。もう直ぐ帰りの電車が駅に留まる時間だ。突然の事態に混乱しているけど今日はそれを我慢して独りで帰るしかない。肩にイシュタルを乗せず帰路に着くと言うは久し振りだった。 …。 …。 …。 日暮店長からイシュタルを引き取りに来るように言われたのはそれから五日後の朝。その日は平日だったけれど早くイシュタルに会いたい一心で学校が終わったら直ぐ引き取りに行く事を約束し、日課の予習と復習も投げ出してエルゴに向かった。 電車の中でエルゴに電話を掛け直し殺人事件におけるイシュタルの扱いについて尋ねたところ、先ずは事件の調査結果について教えてくれた。 今回の事件を大まかに言えば「違法改造が原因で起きた神姫の暴走事故」に落ち着いたらしい。誘拐直後に起きた事件であることからイシュタルを容疑者と訴える声も有ったが現場にあった神姫狩りの(被害者)のパソコンには事件が有ったと思われる時刻にイシュタルはデータコピーをされていたというアリバイが残っていた。 また警察自慢の科学捜査班による検査でもイシュタルには人間を攻撃してはいけないという原則が正常に作動していることと、僕が日暮店長に通報を入れた直後から警察に保護されるまでの間イシュタルには記憶が無いことが証明される。催眠術と言う線も疑われたが、誘拐直後に神姫狩りに強制的に停止させられたと見るのが妥当で、催眠術にしてもでは誰がイシュタルに仕込んだのかという新しい謎しか生まないので却下された。 イシュタルが殺人を犯したという証拠は存在せずそもそも不可能である。以上の事からイシュタルは容疑者から外され、疑惑こそ残るものの消去法で違法改造されたムルメルティアが起こした暴走事故と言う形で解決した。 神姫も人間と同じで正常な判断力を失っていたなれば罪は軽くなる。けれどムルメルティアのAIは修復不可能なまでに滅茶苦茶にされているのでリセットされるだろうと日暮店長は悲しそうに付け足した。 一人の武装紳士として僕も悲しい。傷付いた神姫が居るのに助けられなかった。だから僕はただの我が儘だとは分かってはいるけれど頼んでみる。 「店長、ムルメルティアは僕が引き取ってもいいですか?」 日暮店長は返答を渋っていた。 …。 …。 …。 電車を降りて数分歩き、僕はエルゴに入る。月に一度と決めていたのに一週間に二度来店する日が来るとは思わなかった。仕方が無いとはいえ今月の昼食はずっとエアパスタである。 気を取り直し日暮店長を探して歩きながら店内を見渡していると、おや、あの神姫は新入りさんかな? 可愛らしいエプロンドレスを着たストラーフが商品の陳列をしていた、ってあれイシュタルゥ!? うわ、ノリツッコミなんて産まれて初めてだ! イシュタルも僕に気付いたようで一瞬だけ固まったけれど直ぐに営業スマイルに…なれてない、笑顔になれてないよあれ恥ずかしい格好してるところを息子or弟に見られたところを必死に取り繕うとしている母or姉みたいになってるっていうかさっきから僕の方にもダメージ大きいんだけど何これ何この諸刃のゲイルスゲイルグル。 「い…いらっしゃいマス、御客様」 「…や、やぁ、ここ、こんにちは。その…店長さんは居るかな?」 「日暮夏…店長なら二階にいらっしゃいます」 「分かったよ。あり、ありがとう」 「ど、どういたしまして…」 気まずい凄い気まずい口から泥吐きそうだ知らん振りして他人の振りあれはイシュタルじゃない同型の他神姫だあんな可愛い衣装着てるストラーフが堅物なイシュタルなわけがないさっきイシュタルかなって思ったのは気の所為だいやイシュタルに見えた事自体が何かの間違いだ無かった事にするんだ僕は何も見なかったえぇい消えろ消えろ忌まわしい記憶よぉおおお! 「やぁ、白太くん」 二階から降りて来た日暮店長から後光が差して見えた。と一瞬思ったけどイシュタルにあんな格好させた犯人は日暮店長じゃないかと気付くと殺意が沸いてくる。 「ど、どうしたんだよ、そんな怖い顔して」 「何でも有りませんよ。それでイシュタルを引き取りに来たんですけど」 「イシュタルならそこに…あれ、どこにいった?」 「AHAHAHAHA、店長は何を言っているんですか~?」 そう、僕はまだイシュタルに出会わなかった! エプロンドレスを着たストラーフなんて居なかった! 「まぁいい。引き渡す前に事件について話したい事が有るんだが、時間はいいか?」 「事件について? …いいですけど」 あれ、もう全部聞き終えたと思ったんだけど。 「ジェニー、店番頼んだ。…白太くん、ちょっと来てくれ」 「分かりました、マスター」 「分かりました」 多少とはいえ御客さんのいる店の中で殺人事件の話をするのは嫌なのだろう、僕は日暮店長に連れられて店裏を歩き倉庫を通り過ぎて修理室にまで来た。確かにここまで来れば盗み聞きはされないだろうけどちょっと警戒しすぎじゃないだろうか。 「さてと、白太くん。事件については電車で話した通りだ。覚えているよね?」 「覚えてますよ。でも、もしかしてまだ他に何か有るんですか?」 「いや、無い。俺が知り合いの刑事から聞いた事件の内容は全て君に話した」 「じゃあ他に何が? あ、そう言えば事故を起こしたムルメルティアについて聞いていませんでしたね」 「それは後回しだ。…ちょっといいか」 日暮店長は一度大きく深呼吸する。そして僕に向き直った時、その眼には、正義を宿す強い意思が燃え盛っていた。 「単刀直入に言う。俺はこの殺人事件の犯人はイシュタルだと思っている」 「えぇっ!?」 予想外の告発に思わず大きな声を出してしまった。ここが店の中じゃなくて良かった、じゃなければ周りの人から凄い注目を集めていただろう。修理室で僕の声が反響を繰り返しているのも気にせず日暮店長は続けた。 「今から語ることは全てオタクの妄想だ。証拠も何も無い。聞き流してくれても構わない。先ずはイシュタルの能力についてだ」 「は、はぁ…」 の、能力って、少年ジャンプじゃあるまいし。そう言いたかったけど日暮店長は一切のつっこみを許さない凄味を放っている。 「イシュタルは電子機器を自由に操作出来る能力を持っている。それも並大抵じゃない…神姫のAIを自由に操って警察の科学捜査官すらも欺く、超が幾つ付いても足りない凄腕ハッカーだ。それならパソコンに残っていたログのアリバイも、狂ってしまったムルメルティアも説明が付く。全てイシュタルが手を加えたものだ」 「確かにそれなら説明が付きますけど、ちょっと強引じゃありませんか?」 「だが理論上は可能なはずだ。何故ならイシュタルの性能は既存の神姫より遥かに上なんだからな」 何時か前にも同じ事を言われた様な既視感。 「イシュタルは、確か武術を好んでいるんだったな?」 「大好きですね。自分は武装神姫じゃなくて武術神姫だって自称するくらい」 「フィクションの拳法に内功というものがある。これはバトル漫画なんかでよく出る「気」と殆ど同じもので、鍛錬によって「気」は増大し身体を強化したり治癒能力を高めたり一発で相手を倒したり出来る…イシュタルはこれから着想を得た。神姫である自分は幾ら鍛えても「気」なんて出せないが「電気」なら有る。「電気」を操れるよう君に改造を頼み「電気」を「気」の代わりにして色々な使い方を試している内に電子機器を操るという使い方に気付いた」 「確かにイシュタルは電磁波出せるように改造しましたけど。規定の範囲内で、しかも反射波を利用したセンサーとか遠隔操作系武装へのジャミングとかにしか使えませんよ」 「ハードを改造する前まではそうだったんだろうな」 「ハードを改造したのは動作の速度と精度を高める為です。そもそもストラーフの得意分野は格闘戦ですからね。それに例えとして日暮店長の言う通りイシュタルに電子機器を操作する能力を持っていたとして、ロボット三原則はどうなるんですか?」 「何も問題は無いさ。神姫は人間に攻撃出来ないが神姫には攻撃が出来る。違法改造によって人間に攻撃出来るムルメルティアに人間を殺させるように操ればいい。しかし実際にはイシュタルが殆ど殺したんだろうな。被害者の一人は背後から刃物で急所を刺されて即死した。狂った神姫じゃとても無理な芸当だ。だが実質オーナー無しでファーストランカーにまで駆け上がった神姫なら不可能じゃない」 「そりゃーまー僕は指揮者としてはへっぼこですけどさー」 へそは曲げたけど事実は曲げない。日暮店長の言う通りだから。 昔から僕はスポーツとか格闘ゲームみたいな瞬間的な判断力を必要とするものが苦手で、実を言えば神姫バトルで指示を出したことは殆ど無い。バトルで指示を出したりライドオンしたりする表向きの活躍では無く、神姫の整備、武装の改造、対戦相手の情報収集といった時間を掛けてじっくり目標を理詰めする裏方作業の方が得意だった。 むしろ運動得意で指示出来て神姫整備出来て武装自作出来てイケメンで頼もしい親友出来て可愛い彼女出来る(ここ重要)なんてガチチートだと思うんですがどうでしょう。それはまぁ、横に置いて。 「それじゃあ記憶の空白はどう説明するんですか。イシュタルには誘拐された後の記憶は無いんですよ?」 「今回の事件最大の問題はそれだ。普通神姫の記憶を消すにはオーナーの手助けがいる」 「僕は無理ですよ。神姫狩りの居場所を知ってたら先ず日暮店長に通報してます」 「君を疑ってはいないさ。事件があった時間、君は駅で本を読んでいたことを駅員が証言してくれた」 「疑ってはいたんですね…」 「探偵っつーのは人を疑うのが仕事なんだよ」 日暮店長に疑われたことにショックを受けるべきか、疑いが晴れたことに喜ぶべきか、複雑。 「話を戻すぞ。そう、盗難防止用に神姫の記憶にはオーナー認証を必要とするロックがある。だがイシュタルは自分自身という電子機器すらも操る事も出来るんじゃないか?」 「…ごめんなさい、店長。僕、店長が何を言っているのか分かりません」 「文字通りの意味だと考えてくれ。俺が思い付く限りでは、イリーガルマインドが無くともリミッターを外せ、原則を取り除かずとも人間を攻撃出来、人間の手を借りずとも自分の記憶を消去出来、他人の神姫のAIや記憶を自分に転写出来、意識が無くとも事前に定めた動作内でなら動ける、こんなところか」 「え、ちょ、ちょっと待って下さいよ!」 次々と挙げられていったイシュタルの能力に慌てふためいた。 いや、だって誰だって同じ反応をするだろう、そんなの無茶苦茶だ! もしそれが本当に出来るのなら、出来ない事が殆ど無くなるじゃないか! 何よりも自分で自分を別人に書き換えられるなんて既存のAIだって無理だ! 出来るとすれば、それは最早、 「自分で自分を書き換えられるAIなんて、AIの範疇から大きく離れてる!」 「あぁ、そうだ。イシュタルは一個の電子生命体とも言っていいだろう」 日暮店長は易々と僕の思っていたことを口にした。電子生命体、想像主によって定められた規則に縛られず自由に電子の世界を生きることの出来る不老不死の生命体。科学技術が発達した今でも空想上の存在。 「そ、そんなの、オフィシャルや捜査官の目に留まらないはずがないじゃないですか!」 「予め何処かにバックアップを残しておき検査が入る直前で自分を普通のAIに書き換えるか、もしくは検査するソフト自体を操作すればいい。恐らくは前者の方法を採っているんだろうな」 「な、何でそんなことが分かるんですか?」 「五日前にイシュタルのAIを調べたよな。その時に使ったソフトを調べ直したが書き換えられた痕跡が無かったんだ。…俺が気付いていないだけの可能性もあるが」 「あの時の…もしかして、あの時から疑っていたんですか?」 「いや、全く。今と昔の神姫のAIを調べろって依頼は本当に有ったんだよ。あの時イシュタルは高性能な神姫くらいにしか思っていなかったが今回の殺人事件で考えを改めざる得なくなった」 「でも滅茶苦茶が過ぎますよ。そもそも神姫が神姫を操るなんて事自体に無理が有ります」 「そうか? 神姫を操る神姫なんてざらに居るぜ? 俺とジェニーもその手の奴とやりあった事が有るしな」 ぐぬぬ、確かに居るけどさ。僕も知ってるけどさ。でも、それでも! 「イシュタルが電子生命体だったのなら僕が真っ先に気付いてますし、そもそも電子生命体なんて存在しませんから! はい、証明終わり!」 「何勘違いしてやがる。俺の推理はまだ終了してないぜ」 「終了も何も始まってすらいないでしょう。電子生命体が居るなんて前提に無理が有ります」 「いや、無理ではない。あるAIならその領域にまで成長し得る可能性が有る。…白太くん、君はそれを知っているはずだ」 「えっ?」 えっ? 「「アルテミス・システム」。人間に近付くことを目的に造られたが近付き過ぎた故に破棄されたパンドラのAI。そして君はそれを熱心に調べている。五日前にこの店で買った本も「アルテミス・システム」を造った研究員の著書だ」 「だ、だってそれは…神姫オーナーが伝説の神姫に興味を持つのは不思議なことじゃないでしょう?」 「いや、違うな。君の場合、興味なんて生温いものじゃない。もっと深みに踏み入れている」 「一体何を根拠にしているんですか!」 あ、しまった。つい苛立って探偵に追い詰められた犯人がさらに追い詰められるフラグを立ててしまった。日暮店長が名探偵さながらな知的な雰囲気を醸し出して見える。 「俺の推理はこうだ。黒野白太、お前には何か目的が有って「アルテミス・システム」を研究していてその実験としてイシュタルに「アルテミス・システム」を組み込んだ。だが先のアルテミス同様、実験は失敗しイシュタルは制御出来ない怪物と化した。パンドラのAIの中にいたもの、それが電子生命体「イシュタル」だ。そして今、お前は世間の目を欺く隠れ蓑として生かされている。だからお前はイシュタルの殺戮を見逃して何も知らないような振りをしている」 「そ、そんなことは…」 「イシュタルは今ジェニーが見張っている。正義の味方として全力を尽くすつもりだ。俺に真実を教えてくれないか、白太くん」 「…」 …凄いな、日暮店長は。何の手掛かりも無しにイシュタルの能力とAIの異常成長だけじゃなくて僕の嘘まで見破るなんて。余程「神姫を操る神姫」との戦いが強く印象に残っているんだろう。じゃないと、そんな発想は出来ない。 でもイシュタルが「アルテミス・システム」の失敗作だとか、人間が神姫の隠れ蓑にされているなんてのは不正解、漫画の読み過ぎだと思う。イシュタルが逮捕されるのは困るから正直には話せないけれど迷推理を披露してくれたお礼に間違いの指摘と正しい答えを教えてあげた。 「誤解してるようですが別に僕は支配なんてされていませんよ」 まぁ、照れ隠しで指をヤられたり、血ヘドを吐かされるような特訓させられたりはするけど。あれ、あんまり大差無い? 「そもそも中学生がどうやってアルテミスシステムを作り上げたっていうんですか?」 「君はファーストランカーだ。神姫関係者との繋がりも有るだろう」 「それが目的でファーストランカーになったのは確かですけど根底的にイシュタルと「アルテミス・システム」は無関係ですよ」 「どう言う事だ?」 「原因は僕にも分かりません。物心の付いた時からイシュタルは強かった」 そう。イシュタルは電磁波を操る能力なんて持っていなかった頃から異常だった。過剰強化された武装や反則染みた能力を持っている自作武装が当たり前だった神姫バトル草創期において自分は純正武装のみであったにも関わらず勝ち続けた。ついには『鬼子母神姫』なんて渾名が付いた程だ。 その原因は今でもハッキリとは分からないけど僕は当時の僕を取り巻いていた環境にあると予想している。 今は正式にオーナー変更されてるから誰にも気付かれないんだけど、実はイシュタルの元々のオーナーは僕ではなく僕に僕の父親だった。けれど本当のオーナーからは放置され、命じられるがまま幼かった僕の世話をしている内にイシュタルの中で本来神姫がオーナーに向けるべき忠誠をオーナーではない僕に向けてしまうという矛盾が発生した。その矛盾が当時の神姫バトルという死と隣り合わせな状況で異常成長し、現在にまで至った。 父親が少しでもイシュタルを気に掛けていたのなら。僕が神姫バトルに手を出さなかったら。イシュタルは普通の神姫だっただろう。誰にも愛されなかったことが成長に繋がるなんて悲しい話ではあるけれど。 まぁ、確証は何処にもないし、確証も無しに「愛がAIを成長させた!」なんて二重の意味で恥ずかしいから言わない。 「僕が「アルテミス・システム」を研究してるのは合ってます。実際にはまだ「調べている」程度なんですけどね。ファーストランカーとはいえ僕は中学生ですから」 「君なら「アルテミスシステム」は危険性を知っているだろう。それを一体、何に使おうとしているんだ」 「危険な道を通らないと僕の夢は叶いません。店長、僕はですね、イシュタルを超える神姫を造りたいんです」 「何故だ。まさか本気で世界征服でも企んでいるのか」 「意味なんてありませんよ。これは儀式みたいなものですから」 今でも僕にとってイシュタルは理想の神姫だ。強くて優しくてカッコ良くて可愛い最高の神姫。小さい頃はイシュタルさえいれば何でも出来ると思っていた。 けれど中学に上がってそれじゃ駄目なんだと思うようになってきた。イシュタルに頼ってばかりじゃ僕は腐っていく。イシュタルが居なくても僕は生きていけるようになれなければならない。その証明として僕は自分の中で輝くイシュタルを壊す事を決めた。 その為に今度は僕自身の手で零からイシュタルを超える神姫を作る。それが僕の夢だ。「アルテミス・システム」はあくまでその手段に過ぎない。 「でも、僕には必要なことなんです。僕は僕が僕である為に、イシュタルを殺す」 「君はイシュタルを憎んでいるんじゃないか」 「憎んでますよ。でもそれと同じくらい愛してます」 「愛しさ余って憎さ百倍、って奴?」 「愛と憎悪は表裏です」 「…俺には訳が分からない」 「僕とイシュタルの関係自体が異常ですからねー」 そんなに居ないと思う。神姫を実の母親のように想ってるオーナーなんて。 言いたい事は言い終えたから話を元に戻そう。殺人事件の犯人も、イシュタルの真骨頂も、電子生命体の存在も、結局のところ僕が本当の事を話さない限り全て物的証拠の無い妄想に過ぎない。日暮店長には悪いけど僕は拷問されても吐くつもりはないし自白剤対策もバッチリしている。 一番手っ取り早い証明方法はイシュタルのバックアップを見つけ出す事なんだろうけどそれは絶対に誰にも見つけることは出来ないという自信があった。 「というわけで僕は何も知りません。イシュタルも、ちょっと強いだけの普通の神姫ですよ」 「恐らくイシュタルは他にも人を殺している。それを君は見逃しているのか?」 「…悪いとは思ってるんですよ、一応」 これは本心だ。人を殺す事は悪い事だって思ってる。だから出来るだけイシュタルに殺しはさせないようにしているし、神姫であれば見ず知らずの相手でも助けるようにしている。それにイシュタルだって敵は必ず殺すけど敵しか殺さないように決めているらしいから誰彼構わず殺しているわけじゃない。 日暮店長は複雑そうな顔をし始めた。僕に対して強く出るべきか見逃すべきかを悩んでいるんだろうけど、やがて僕を告発した時の様に大きく深呼吸した。 「分かった。なら俺から話す事は無い。そもそも君には何の疑いも掛けられていないからな。…済まないな、俺の妄想に付き合わせてしまって」 「いえいえ、僕も楽しめましたから」 「君達も一応は幸せに暮らす神姫とそのオーナーだ。それを壊すような真似を終えはしたくない」 「僕も同じです。もしも不幸な人を見掛けたら出来れば救ってあげたいと願ってます」 「だが君達にムルメルティアは預けられない。…俺を意地悪だと思うか?」 「またいつかの借りってことで」 日暮店長の妄想は終わった。ムルメルティアを手に入れられなかったのは残念だけど見逃して貰えただけでも良しとしよう。ちょっと後味の悪い雰囲気のまま修理室から店にまで戻るとエプロンドレスを脱いだイシュタルが迎えてくれた。 「話は終わったのか?」 そう言えばイシュタルにこの言葉を使うのも久し振りだなぁ、なんてしみじみしつつ、 「おかえり、イシュタル」 「ただいま、マスター」 いつかちゃんと「さよなら」が言える日が来るといいなぁなんて思った。
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島津 輝 (しまづ あきら) 20歳の大学生。誰かが困っているのを放っておけない性格だが、ときに空回りすることも。 訳あって「明石食堂」に居候中で、料理の腕はなかなかのもの。 「素材本来の味を生かす」ことを信条とし、それは神姫のチューニングや戦術にも現れている。 めぐみには頭が上がらないらしい。 メリー 輝のパートナーであるメリエンダタイプの神姫。ウェイトレスを務める。 心優しく誰にでも丁寧に接するが、時折腹黒い一面をのぞかせることも。 輝のことを「アキラさん」と呼び、神姫とオーナーの関係以上の愛情を示す。 雅 (みやび) 輝のもう一人のパートナーであるこひるタイプの神姫。主に料理を作るのが担当。味はなかなか。 気が強く口が悪い面もあるが、本当は思いやりのある神姫。要するにツンデレ。 メリーとはなぜか非常に仲が悪く、顔を合わせるたびに喧嘩になる。 実は戌轡人造舎で開発されたプロトタイプモデルだった。 水野 健五 (みずの けんご) 14歳の中学生。少し引っ込み思案だが芯は強い。 ひょんなことから輝達に出会い、行動を共にするように。 オーナーとしてはまだまだ未熟。 クレア 健五の神姫。アーティルタイプ。 周りに感化されやすく、感動屋。 根は素直である。 明石 京介 (あかし きょうすけ) 「明石食堂」の店主。32歳。 物腰の柔らかい人。実は、輝の祖父の弟子だった。 周りからは「おやっさん」「マスター」と呼ばれる。 及川 めぐみ (おいかわ めぐみ) 22歳の美人の魚屋さん。 普段はさばさばしているが可愛い物に目が無く、みやこを溺愛している。 輝から好意を寄せられているが本人は気付いていない。 みやこ めぐみの神姫で、マオチャオタイプ。 語尾に「みや」と付くのが特徴で、考えすぎるとオーバーヒートを起こす。 子供っぽい性格。 森本 直也 (もりもと なおや) 輝と同じ大学に通う悪友。20歳。 機械に強く、武装から果てはバイクの改造までお手の物。 輝と同じくめぐみさんに好意を寄せる。 アッシュ 直也と共にいるフォートブラッグタイプの神姫。 生真面目で自他共に妥協を許さない。 アンリ・シャルダン 銀座の高級フランス料理店でシェフを務める男。24歳。 天才的な料理の技術を持つが、そのせいかプライドが高くナルシスト。 神姫のオーナーだが、その実力は……。 ソレイユ アンリのパートナー。プロキシマタイプ。 オーナーに似てナルシスト。また、新型であることに誇りを持つ。 ノワール マリーセレスタイプの、アンリのもう一人のパートナー。 「可愛い神姫をいじめるのが好き」という性癖の持ち主だが、根は真面目で良い神姫だったりする。 三条 初菜 (さんじょう はつな) 京都の旅館の跡取りである、輝の幼なじみ。 少し方向音痴なところがあるが、丁寧な性格。 輝の事を心配している。京都の強豪バトロンプレイヤー『京都六華仙』の一人。 牡丹 (ぼたん) 初菜に付き従う、フブキタイプの神姫。無表情だが、笑いの沸点はズレている。 起動したのはかなり古いらしく、輝と雅の過去も知っているようだが……。 『遊びの達人』の異名を持つ。 天貝 璃子 (あまがい りこ) 健五のクラスメートで、学級委員長を務める。十四歳。 面倒見が良く、転校してきた健五になんとかなじんでもらおうとしているが、なかなかその想いは伝わっていない。 ガブとレンのオーナーになった。 ガブ もとは寺田さんというおばあさんの神姫だったが、璃子に引き取られることになったガブリーヌタイプの神姫。 人間を信用していなかったが、輝達とのふれあいで心を開く。 レン ガブと同じく璃子に引き取られた蓮華タイプの神姫。 誰もいなくなった寺田さんの家を、ガブと共に守っていた。 「誰がおばあさんぢゃー!」 佐名木 一馬 (さなぎ かずま) お台場を拠点にする有名ランカー。 体が大きく、実直な性格。甘い物は苦手らしい。 ケイティ 佐名木のパートナーの、グラフィオスタイプの神姫。かつてメリーに助けられた。 豪快な性格で、人当たりがいい。 『熱砂の戦鬼』の異名を持ち、重装甲とパワーで相手を圧倒する。 城ヶ崎 玲子 (じょうがさき れいこ) 横浜を拠点とする、ファーストランカー。二十一歳。 一見クールな美女を思わせる外見だが、その実陽気でつかみどころの無い女性。 アキュート・ダイナミクスの専属テスターを努めているが、他にもいろいろな仕事を請け負っているのだとか……? アテナ 城ヶ崎のパートナーで、『エアドミナンス』というモデルのラプティアス。 オーナーとは正反対に真面目で厳しく、『女神』と呼ばれる。 過去に何かがあったようだが……。 (以降追加予定) 武装食堂へ戻る
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戦うことを忘れた武装神姫・東杜田の日常 東杜田技研・商品案内(ちっちゃい物研・商品案内) 商品案内-01 通称「ちっちゃい物研」が開発した神姫関連製品の紹介第一弾。和の心を大切に。 商品案内-02 神姫関連の架空製品の紹介第二弾。キャッチコピーは「おいしゃさんごっこって何ですか?」。 商品案内-03 第三弾。冬の必需品と言えば・・・。猫子オーナーならば、ぜひとも欲しい一品です。 商品案内-04 第4弾。ついにデラックスタイプのクレイドルが登場しました。ご予算は大丈夫ですか? 商品案内-05 第5弾はいきなりの玄人向け製品。さすがちっちゃいもの研、相当のキワモノです。 商品案内-06 「ちっちゃい物研」製品シリーズ、一部発売延期のお知らせ。 開発側で何やら問題が・・・。 商品案内-07 サブパワーユニット、開発中止?!・・・と思いきや、1ユニット型だけにしぼっての開発続行のようです。 商品案内-08 人気のクレイドルシリーズ、充実の兆し。しかも今度はオールシーズン対応のお手頃価格! 商品案内-09 東杜田技研の他の部署にも神姫熱が飛び火した模様。神姫サーキットが出来る日も近い?! 商品案内-10 神姫とお出かけするときに、困ることはありませんか? 例えば・・・そう、出先での充電とか・・・。 商品案内-11 隠し球で突如発表・発売されるも、2時間ともたずに即完売したという伝説のアイテム! 商品案内-12 お手軽にパワーアップを望む神姫たちに、オーナーさんたちに、ぜひオススメの逸品! 商品案内-13 神姫のボディーケア、ヘアケアを怠ってはいませんか? 神姫には、ぜひ神姫専用品を! インプレッション情報 ホビーショップエルゴにて、一部商品のインプレが掲載されています。 ご購入の際の参考にどうぞ! <<トップ へ戻る<<
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概要 レアリティN 星1 通常Cost70メリット デメリット 解説・説明 アップデート履歴 レアリティR 星2 通常Cost130メリット デメリット 解説・説明 アップデート履歴 レアリティSR 星3 通常Cost320メリット デメリット 解説・説明 アップデート履歴 レアリティUR 星4 通常Cost860メリット デメリット 解説・説明 アップデート履歴 コメント 概要 ここでは各レアリティがどんな性質なのか、簡単に解説していく記事となる。 どのレアリティがどんな役割をするのか分からない初心者や、編成構成に煮詰まってスランプに陥ったオーナーの役に立てれば幸いである 見た目の通りレアリティ(星)が高くなれば高性能になっていくが、高レアリティが正解というわけでもない。編成構成に上限が設定されている以上、各レアリティごとの役割が出てくる。 そして神姫や個体値によってそれぞれ役割が大きく変わることもある場合があるので、神姫毎の記事や編成研究の記事も合わせて自分なりの答えを見つけて欲しい。 レアリティN 星1 通常Cost70 メリット 一番被撃破時の損失が少ない。 一番入手が楽。 一番強化が楽。 一番得意補正値が大きい。 絶対編成に組み込める。 Cost+10(通称6V、キャパオバ)の恩恵が大きい。 デメリット 一番性能が低い。 一番アクティブスキルの恩恵が少ない。 解説・説明 一単体での性能こそ最低だが、塵も積もれば山となると言った物量戦法もできる。 だが流石に低性能。撃破が増えれば気が付いた時にはどうしようもできないなんてことも。無謀なことはしないこと。てかできない。 どうしても対戦相手は全員同レアリティかそれ以上がいる状況になるので、常に性能差による不利を強いられることになる。 一番性能が高いURとの性能差は絶望的。どう逆立ちしようがまず逃げきれないし勝てないので、少しでも相手にダメージを増やすのが交代後の負担軽減に繋がる。 その性質上攻められたら簡単に撃破されるので、攻撃よりの装備構成に仕上げるプレイヤーも多い。個体値は当然ATKとBST。 逆にそれでも撃破されない自信がある・されたくない編成構成や立ち回りなら、DEFやLPの個体値のがオススメになる。 アクティブスキルは大抵レーザー等の直接攻撃系スキルや防御力ダウン等のデバフ系スキルが採用されやすい。明確な目的があるなら回復もありだが、回復量や事故撃破されやすい性能からして延命に繋がりにくいのが現状。 いずれにせよどんな編成構成や立ち回りにしようとこのレアリティが低性能であることには変わりない。 しかもアプデによりスキル乱発を利用した爆弾戦法が事実上不可能になったので、今まで以上に無理ができなくなった。(その戦法が強力すぎたのもあるが) ゆえにそれらをどうカバーできるか模索する程度にはゲームを理解してきた中級者以上向けのレアリティとなっている。考えもなしに使って勝てるほど甘くなく、まして初心者なら当然。 ちなみに通称6Vによる装備Cost+10の恩恵がレアリティ間で一番大きく、「装備1つをレアリティをRにアップグレード出来る(N装備コスト10×パーツ7箇所=70の1箇所をR装備コスト20に変更出来る)」という明確な強化要素となる。 アップデート履歴 日時 2021.04.27 内容 スキルゲージの上昇量低下 レアリティR 星2 通常Cost130 メリット 被撃破時の損失が少なめ。 入手が比較的楽。 編成に組み込みやすい。 SR武装を組み込んだ武装構成も作れる。 比較的アクティブスキルを発動しやすい。 デメリット 比較的性能が低め。 Nと比べて強化が面倒になる。 解説・説明 Nから一つコストが重くなったが、しっかりと体感できる程度にはステータスは上昇してる。 流石に単体での性能こそそこまでだが、頑張ればUR相手でも時間稼ぎができると言えば、Nとの性能差を感じるはず。 でも無茶して撃破が増えると後が大変なのはNと一緒。 所詮は低性能と思われがちだが、後述するSRがコスト対バランスが悪い・URの性能が圧倒的なだけで、全体的に見れば平均より少し下といった性能は確保している。 組み込みやすいコストというのもあって、メインから他のレアリティの尻拭い・中継ぎと、立ち回りや武装構成の幅がとても広い。 入手率や使いやすさから、初心者から上級者まで一番お世話になっているプレイヤーが多いレアリティ。 そして何でもできる=どう活かすかが非常に重要になるというのもあり、ある意味このゲームで一番勝利へのカギを握ってる とも言いきれる。 基本的なことはこのレアリティが教えてくれるので、困ったら使ってみると良い。 ちなみに通称6Vによる装備Cost+10の恩恵がレアリティ間でNに次いで大きく、SRの武装を付ける際にNに落とす武装を1箇所減らせる他、R武装で統一出来るといったメリットがある。 アップデート履歴 レアリティSR 星3 通常Cost320 メリット 比較的性能が高め。 UR武装を組み込んだ武装構成も作れる。 複数投入出来る組み合わせがある(NSRSR) デメリット コスト比で性能がやや物足りない。 被撃破時の損失が高め。 入手が比較的難しい。(排出率約20%) 強化が大変。 解説・説明 Rから一つコストが重くなったが、Rからのステータス上昇量が控えめ。URの一回り性能が落ちたコストだと思って使うと痛い目に遭う。 実際にRに毛が生えた程度の使用感のため、コストパフォーマンスはRに劣る。 だが腐っても準高コスト。URとも多少不利程度には戦えるのはRにはできない芸当。 ここまでコストが上がると被撃破前提の立ち回りはできなくなってくる。アクティブスキルに回復の採用を検討しよう。 コストパフォーマンスが悪くなってより無理ができなくなったが、基本的にやることできることはRと同じ。 ただなんでもできる→中途半端に使うならRで良く、運用を特化しすぎるとURで良くなってしまうので、URよりは撃破される事を前提としつつ、編成内のどのレアリティ(N・R・SR)でも一位を迎えれるよう常に臨機応変に立ち回る必要がある。 URには性能差で勝てないわNからの攻撃は痛いわで扱いにくいくせに、立ち回りで要求されることが多く、挙句同じ入手しにくい仲間のURの特別感には霞むので、使用者は少ないのが現状。 ただ扱いにくいだけであって弱いわけではないので、Rでは物足りないけどURは怖い(そもそも持ってない)なんて初心者から、このレア度でも立ち回れる上級者なら強い時間帯が多い組み合わせ(NSRSR)も組める為一考の余地があるか。 また、ダメージのインフレによりURですら割と消し飛ぶようになってしまった為、開き直ってSRを使うという選択肢も浮上してきた。 通称6VによるCost+10の恩恵は「他のパーツを全てNにする事でUR装備を2箇所装備出来る(140×2+10×5=330)」点であり、明確な意図と覚悟を持った構築になる。 アップデート履歴 レアリティUR 星4 通常Cost860 メリット 性能は最高なので無理を通せる場面が多い レア差が広がる程相手を圧倒できる デメリット 入手がまず困難(排出率の問題で) 育成が困難(装備・好感度共に) 披撃破時の損失が最も多い為、タイミング次第でリカバリーが絶望的になる キャパオバ(cost+10)の恩恵が皆無 解説・説明 最高のレアリティ。コスト4の為形は必然的に1-2-4で組む事になる(一応、コストを余らせるなら1-1-4もある 一番コストを割くだけあって性能は高く、低レア相手には数値の暴力で蹂躙できるポテンシャルを誇る為、是非とも使いたいマスターも多いだろう。 またスキルを安定して複数回使えるため、特に「体力回復」系のスキルとの相性が良い。このスキルを付けているなら、低レアとのタイマンはほぼ負けなしだろう。 但し幾つか問題もある。 排出率…検証の結果からおおよそ5%と言われてる為まず入手から厳しい。更に神姫や個体値まで厳選するとなれば最早苦行に。なので、多少の妥協はしよう。 育成…編成の問題上、一人づつしか育成出来ない。更に必要な好感度も一番多い為かなりプレイをこなす必要がある。好感度アップアイテムを率先して活用しよう。 また、装備も神姫カード程ではないが出にくい。純正武装はコンテナを回収するなどして地道に揃えよう。イベント武装は気合いでなんとかしろ 勿論武装の強化に必要なネジも増えてるのでゲットした武装を完成させるのも一苦労である。 忘れてはいけないのが、このレアリティの神姫が強いのではなく、強化された武装が強いという事である。 戦闘…性能が高いからと言って無敵という訳ではない。同レアはともかく、低レア相手でも自分と相手の武装次第では思わぬ痛手を負い、逆襲される事もありうる。 また複数のプレイヤーに囲まれて叩かれると、いくら高レアリティとはいえ耐えられる時間は短い。 そして撃破されると5秒近く拘束される上、控え(NかR)で戦う事になる。つまり撃破されるタイミング次第では巻き返すのが非常に困難になる 撃破されると損失が激しい性質上、試合終了時に出撃している、かつトータルのUR被撃破回数は0〜1回の状態にしたいので、出撃順はよく考えて決めよう。 個体値は生存重視にするのがコストの性質的に向いているだろうが、そもそものポテンシャルが高いので極端に拘らず自分の嗜好に合わせて選ぶと良いだろう。と、言うより選べる程入手しやすくもないし 尚、通称6VによるCost+10の恩恵は「パーツにこれ以上のレアリティが存在せず、上がったところで装備できるレアリティが上がるわけでもない上にワンウェポン運用で事足りる」訳であり、しかも5Vも微上方を受けたので実質5Vの完全下位互換という立ち位置になっている。オークション等で売って2Vを大量に仕入れた方がいいと思う……にゃ アップデート履歴 コメント 名前 コメント
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(……?) (樹羽、どうしたの!?) (今、華凛の声が聞こえたような気がした) (私は聞こえなかったよ!) シリアが聞こえなかったなら、たぶん私の勘違いだろう。そんなことより今は目の前のことに集中しないと些かマズイことになる。 思考しながら短機関銃を腰だめに構え掃射する。しかし、相手のビットには当たらない。 『廃墟』のビルの間。その宙空で私はエリーゼの放つビットに追われていた。おそらくビットを先行、索敵させて自分は後からくるつもりなのだろう。 「っ……」 別のビットの攻撃をなんとかかわす。このままでは無駄弾が増えるだけだ。 (シリア、そこのビルの角2回曲がった後、振り返って) シリアに指示し、シリアがそうなるようにブースターを動かす。 少し大きなビルを旋回する形で曲がる。曲がり切ったところで姿勢制御。再び短機関銃を構える。 ビットの動きは遅い。ワンテンポ遅れて現れたそれを、短機関銃の掃射で破壊する。小さな爆発。さらにそれを突き抜けるように現れたもう一機も破壊。 (よし……) (4時の方向に敵影あり!) その方向を見る。ビルが邪魔で直接は見えないが、バイザー越しの世界には丸いサイトが出現していた。距離は10s。ビル一つ挟んだ所にいるようだ。 (……!?) 背中に伝わる謎の悪寒。無意識のうちにブースターを使って真上に上がっていた。 次の瞬間に壁を突き破り伸びる光の帯がそこにあった。ビルの後ろから壁抜きとは。 (危ない) (って言うかエネルギー反応出す前に回避出来た樹羽が凄すぎるというか……) なんとなく、ただの勘ではあったが回避出来た。結果オーライだ。 (上から乗り越える。ボレアスお願い) 手の短機関銃が消え、代わりにランチャーが現れる。それを持ってビルにそって上がっていく。 屋上に到達するまで相手は一切動いていない。まさかこっちをロックしていないなんてことは有り得ない。 (っ!? ジャミング!) サイトが消える。そして、何かが目の前を通り過ぎていった。空を見ると、そこには白い影が―― 「ぐぅっ!」 とっさにボレアスを掲げる。だがその手に握られた青い刃は容赦なくそれを切り裂いた。レールアクションを使われたらしい。 真っ二つになったボレアスが爆発する。その爆発の勢いで相手との距離を取る。 「いぇああああっ!!」 だがエリーゼは爆風など意に介さずに向かってくる。 「はぁっ!」 それに対して私は向かいのビルの窓枠に足を突き、薙刀を構えた。エリーゼの小剣と私の薙刀が交錯する。だが、相手は空中。こちらは不安定ながらも足場がある。おまけに今の武器は薙刀。私の右手が支点となり、左手が力点を担い、そしてエリーゼの小剣との接点が作用点となる。 「てりゃあっ!」 エリーゼの小剣を押し返す。その勢いのまま窓枠を蹴り、両手にエウロスを出す。エリーゼは左手のシールドを構えるがそれを右手で掬いあげるように払う――つもりがシールドを完全に弾いた。なお良し。 さらに追撃するように左手を振り抜く。それは相手が張った緊急バリアに阻まれたが、それでいい。 両手を振り抜いた状態からエウロスを消し、薙刀を展開する。そのままブースターを使って相手の真上に跳ぶ。 「落ちろっ」 バリアの上から叩き付けるように薙刀を当てる。相手は薙刀に押されて落下する。HPはまだ残っていた。 ならばと落下する影に短機関銃を斉射する。 しばらく撃っていると、試合終了のブザーが鳴った。相手のHPが0になったらしい。 「……暴徒鎮圧完了」 「違うからね?」 第九話の1へ 第九話の3へ トップへ戻る
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MMS戦記 コメントログ コメントに書き込みを頂いた過去ログをこちらにまとめました。 たくさんのコメントありがとうございますね。 コメントページ修正しました。お手数おかけして申し訳ございません -- カタリナ (2011-01-15 12 00 26) いつも良いところで墜ちるアオイさん。今度は頑張って!w -- 名無しさん (2011-01-23 20 04 02) チーム名w -- にゃー (2011-01-24 00 18 02) 面白く成ってまいりましたなぁ、艦の沈め方のセオリー通りですなぁ…それにしても、ナウシカを思い出した私は旧い地球人(笑) -- 触神 (2011-01-24 20 17 10) >名無しさま ありがとうございます。まあ、どうなるかはお楽しみに・・・ -- カタリナ (2011-01-25 00 25 23) > にゃーさま 名前が適当なのは仕様ですww -- カタリナ (2011-01-25 00 25 53) > 触神さま なんと脆い船じゃ・・・ はい、実はこのシーン、ナウシカのバカガラス襲撃シーンを参考にしています。大当たりですwww次回もお楽しみに!! -- カタリナ (2011-01-25 00 27 30) 定期便なんて言われて居るからしっかり対策立てられるんだな(笑)、風穴空いたからこその反抗だとしてもね、高度が有ったらアノシーンに成るんでしょうが、爆撃がメインじゃむりか、あぁ楽しきかな大規模戦闘、続きが楽しみです -- 触神 (2011-01-29 12 49 58) >触神 さま 定期便、対策は立てやすいですが、それは向こうも襲撃を予想しているので、なかなかハードな戦いになりますよー大規模戦闘、武装神姫は基本は1対1の戦いがメインですが・・・それだといろいろ縛りが出そうなんで、あえて私は大規模な戦闘を描いてみました。最近のゲーセンもオンラインで10体10とかの戦闘とか普通にあるので、ノリはそんな感じです。戦場の絆とかボーダーブレイクとかww武装神姫も多分、そんな感じで戦うと思うのでなるべくリアルに戦闘とか表現しようと思います。次回もお楽しみに!! -- コメント返し (2011-01-30 22 44 04) 確かにニーズに沿ったサービスですよね、戦艦武装はタイマンでは成立しませんから(笑)こう言った所から発生した需要と考えれば更にリアリティーが増しますねぇ〜、正に大戦略(爆)戦記の名に負けぬ様に頑張って下さい -- 触神 (2011-02-02 14 01 42) > 触神さま 大型の戦艦型神姫、もちろんタイマンでも倒すことは可能です。この戦艦型神姫を単体で倒せるかどうかが、強神姫かどうかの境目ですね。他所さまの神姫の世界観ではこういった大型の神姫は存在しないので、また違った楽しみ方があると思います。次回もお楽しみにww -- カタリナ (2011-02-02 22 34 11) 初めまして。夜虹というものです。話を最初から読ませていただきました。 序盤からコアの性格にとらわれない性格の神姫が多いですね。しかし、その実力は本物。 単純なブラフのために無駄な武器を持ったり、わずかな隙を突いたりと展開が面白いですね そしてチーム名はすごく適当だったり、ちゃんとしたものだったりカオス極まりないですね。それはそれでメンバーの性格が出ていていいものではあります。 それでもそれぞれチームの性格が分かれていていい勝負になっていてよかったと思います。今後が気になるところです -- 夜虹 (2011-02-03 05 39 23) >夜虹さま ありがとうございます。我が家では初期の性格はコアに忠実ですが・・・年月がたってくると変化してくるといった感じです。戦いの流れや戦闘シーンは実際にゲームとか喧嘩、日常のなにげない駆け引きとかそういうのを参考にしています。チーム名や神姫の名前は適当です。特に深い意味はなかったり・・・今後ですが、私はいいかげんであんまり考えていないので、成り行きで物語を進めるので、私も今後どうなるかは決めていませんし、知りません。どうなるんでしょうねーーー -- カタリナ (2011-02-04 23 32 07) にやーと冷たく笑う内野さんに惚れそうです。 この人達は神姫を使い捨てにしているようですが、複数所持していて用途別に使い分けしているのでしょうか。 冷酷に見えますが戦艦型相手ならこの作戦も仕方無いでしょうね。 -- 名無しさん (2011-02-13 01 17 26) >名無しさま 使い捨てではないですよー、我が家の神姫バトルはリアルバトルがメインですが、壊れたりした場合は修理して何年も大事に戦わせています。複数所持しているオーナーさんも多いですし、作戦や戦術によって神姫や武装はもちろん使い分けています。いろいろなオーナーや神姫が登場するので次回もお楽しみに!! -- カタリナ (2011-02-17 22 42 45) 海外の映画的なセリフ回しに痺れます。 -- 名無しさん (2011-02-20 01 03 22) >名無しさん アパーム!!弾を持ってこいーですけどねww -- カタリナ (2011-02-20 01 12 16) 軽白子隊の壮絶な戦いに興奮しました!w我が家の軽白子隊もこういう感じのバトルを想像しているので最高ですw -- ユキナリ (2011-03-24 17 36 51) >ユキナリさま ありがとうございますw結局、ドセットにトドメを刺したのは、名も無き軽白子でした!!そして次の瞬間バッラバラに・・・軽白子は群れるのが前提の設定なので多分、こういう使われ方するんじゃないかなーと思いました。 -- カタリナ (2011-03-26 19 54 27) バトル中にだべりだす…wデボラさん達のイメージが変わりましたwガーリオンの皆さんも普段は普通に可愛い娘さんなのかもしれませんねw -- ユキナリ (2011-04-24 12 14 55) >ユキナリさま まあゲームですし、みんななりきって遊んでいるといった感じですねー遊びゆえにいろいろと真剣ですがww我が家の神姫はみんな可愛いよ! -- カタリナ (2011-04-27 00 12 21) ウォースパイトさん…本当にいつもご苦労様です…。神姫界でヤムチャ的活躍が、すっかり板についているような気がしますw本当は凄い強いと思ってますがw -- ユキナリ (2011-05-05 12 28 29) >ユキナリさま 強いザコ!!強いけどやられるシーンが多いだけです。気にしないでくださいw -- カタリナ (2011-05-05 20 10 10) お疲れ様でした、楽しませて貰いました、時間切れと言うなんともリアルな終わり方でしたなぁ〜でも其処が又良い(笑)、しかしまぁ此処まで壊れたら修理不能な神姫も居るんじゃ無いですかねぇ? -- 触神 (2011-05-07 07 49 48) >触神さま まあ、よくあることですよねーさて、我が家のバトルは基本、リアルバトルで実弾や実剣を用いてガチンコバトルするのですが・・・めちゃめちゃに破壊されてもちゃんと元通りに直してあげるのが、マスターの勤めとたしなみでもなります。後、壊れてもしっかりと修理してくれるサービスや体制が整っているので修理不能で起動できない神姫はほとんどいません。所詮神姫は機械ですし、壊れたら直せばいいだけですし、記憶もコピーして残せますしー -- カタリナ (2011-05-08 12 00 53) 深夜0時に現れるステルス神姫…あの人ですねw今回も同時に大量破壊を示すテロップ列が…w同時破壊によるテロップ列は見ていて爽快ですwでもマスターの方は、いつかへこませたいと言う衝動がwイケメンは敵!w -- ユキナリ (2011-05-09 17 42 05) >ユキナリさま 同時破壊のテロップの元ネタはボーダーブレイクだったり!!!深夜0時に現れるステルス神姫・・・・さてさて・・・イケメンマスターというか、痛いマスターというか・・・とりあえずお楽しみに!! -- カタリナ (2011-05-09 23 35 46) 伊藤勝成さん、格好いいご老人ですね!私も2041年だと、この方と同じぐらいの年齢になっていますw少し下ですがwこんな老人になりたいものです。夜帝討伐隊第2陣と言った感じですが今度はとても優秀な軍師を交えての作戦、楽しみにしています! -- ユキナリ (2011-05-15 11 54 23) >ユキナリさま ありがとうございます。老若男女神姫を持っているという設定です。今回は将校型神姫が参戦です。他の神姫とは一味違う戦いをご覧ください。 -- カタリナ (2011-05-21 19 32 37) これは!w非常に興味を持っていた非公式バトルの話がついに作品化!行為の傍らに残骸となった神姫があると言うシチュエーションが最高ですwそして挿し絵付き!カタリナ様の描かれる女性キャラクターは本当に魅力的です。続編も楽しみにしていますw -- ユキナリ (2011-05-22 12 37 42) 駆逐艦型は無いのですか? -- げしもちゃん (2011-05-22 13 54 28) >ユキナリさま 禁断の非公式バトルロンド・・・実は前から構想は練っていたのですが、中途半端にするのはイヤなのでいろいろなゲームやマンガを見て構想を練り直し、かなりハードで危険な本当の意味での裏の非公式バトルロンドをやってみようと思います。戦いはよりハードに、敗北者には相応の代価を、ボリュームたっぷりのスケールで満足できるようなお話をしようと思っていますのでお楽しみに・・・・ -- カタリナ (2011-05-23 23 16 14) >げしもちゃんさま 語るとうるさくなるのですが・・・我が家には多種多様な艦艇タイプの神姫がいます。とりあえず主力と呼ばれる大型艦艇神姫。航空母艦型神姫・戦艦型がいます。そして補助艦艇、潜水艦型神姫や輸送艦型神姫などがいます。また現在新たにオンステージに、コルベット艦型神姫と強襲ホバークラフト型新規と呼ばれる。新型の艦艇タイプの神姫を製作・量産しました。詳しくはブログ等でチェックしてくださいwww -- カタリナ (2011-05-23 23 21 52) カタリナ信者の僕が来ました -- 名無しさん (2011-05-28 20 18 05) 参加する女性への品定め役が居るんですね、確かにこのシステムなら自然に美少女が集まってきますね!その品定め役の醜男さんいい味していますねw私はキモい男が美少女を無理やりとか悪臭で歪む表情とか大好きなので彼のような存在は嬉しいですねwキツい悪臭を嫌がっているルカさん可愛かったですwもし私が参加し勝ったなら、醜男さんと相手オーナーを絡ませじっくり見物したいですw自分は手を出さずにw -- ユキナリ (2011-05-29 11 19 39) >名無しさん様 信者ってwwwありがとうございますww -- カタリナ (2011-05-30 23 27 05) >ユキナリさま まあ、エロゲでもよくいますよねwwこういうキャラwwこおういう汚れ役はいたら便利ですww何かとwww -- カタリナ (2011-05-30 23 29 22) トップページに戻る
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戻る TOPへ 次へ ツガル戦術論 鏡の試練 前編1 地区大会で優勝を収めたおれ達は、次の大会開催までの一週間を利用してトレーニングに励んでいた。 家からあまり離れていない行きつけのセンターには、始めたばかりの初心者から、ファーストリーグで鳴らしている猛者など幅広いユーザーが集まっており、戦術研究の場としては打って付けだった。卓上で考案した戦略が初心者に通用しても、上級者には通用しない。というのは勿論の事だが、その逆のケースも存在するのだから面白い。 最良の上達方法が実戦というのはどんな世界でも変わらないのだ。 前大会で披露した、中距離攻撃力が低いと言う欠点を逆に利用する戦術に対してやはり対策が立てられており、腕のある神姫とのバトルではこちらが劣勢。贔屓目に見て五分の勝負に持ち込まれる事となった。対策に対する対策が必要だ。が、さりとて、そんなに早く新戦術が思い付くわけでも無い。 だからこそ、既存の戦術を煮詰め、新たなコンボを編み出そうとセンターで連戦を続けているのであった。 コンボとは? 攻撃とは多くの場合、ひとつの武器から放たれる一撃で完結するものでは無い。単一武器による連続攻撃。異なる性質を持った複数武器による連続または同時攻撃。機動しながらの攻撃。回避機動及び防御行動からの反撃。さらに体術を含む近接武器による格闘との連携。等など。 例えばハンドガン一丁をあなたの武装に追加しただけで、これだけ攻撃パターンが増えるのである。 武装を増やすと言うのはつまり火力の増加のみに留まらず、相手に対して取れる戦術が増える。攻撃力と手数の二重の増加、則ち戦力の上昇に繋がると言うわけだ。それを理解せずにカタログスペックだけを見て武器を扱えば、その「武器に使われる」事となる。各武器の特性を理解し、自らの思い描いた戦術にマッチした装備の組み合わせを探し出すのが重要だ。 武装とはマスターと神姫にとってアイデンティティ。 武装とは、自らの技術と経験と信念に基づいて選択すべきものである。 さて、神姫の武装やオプションが徐々に増加しているにも関わらず、未だに格闘武器のみというスタイルが根強く残っているが、それは本人らが意識してる、してないに関わらず上記の理由が大きいだろう。 剣しか装備してなければ、その剣を活用せざるを得ない。言い換えれば、剣の性能を100%引き出す事に繋がるのだ。もしこの神姫がどんな間合いでも一瞬で詰められる機動力があれば、剣以外の武器を持たぬ彼女は迷いなく敵を一刀で切り伏せようとするだろう。 余計な事を考える必要が無いというのは、ここ一番の場面では大いに強みになる。 さらに彼女の剣が片手で扱えるものならば、無限の用途を備えた武器である「左腕」を攻撃に組み込める。叩く、払う、掴む、捩る、投げる、防ぐ。左腕と剣によるコンビネーションは近接格闘戦において無限のコンボを派生させ、剣が本来持つ戦術的効果を上回る性能を発揮させるだろう。もちろん両手持ちの剣を扱ってもその性質はほとんど変わらない。刀身で斬る、切っ先で突く、刀を返し薙ぎ払う、柄で殴る、峰で叩く。射撃武器と違い、たった一つの武装で無限の攻撃パターンを繰り出せるのが格闘武器の利点の一つだ。 だがこれは、使用者の技量と武器の性能が直接的に結びついているとも言えて、使用者の鍛錬が無ければ威力を発揮しない、という欠点も孕んでいる。だがそれ以上に、ただの物質であるはずの格闘武器が使い手とともに千差万別 変幻自在に身を翻し、激しい攻撃をぶつけ合う格闘戦のダイナミズムは多くの人を虜にする。 この先、いかに射撃武器が充実していこうとも、多くの神姫達は格闘武器を手放さないだろう。 少し話しがずれた。閑話代休。 私の主張するところとは、つまり。 神姫の装備に対しての熟練度は、確実に戦力として加算されると言う点だ。 先日行われたセカンドリーグ同士のフリーバトルにて、巡航射撃型のアーンヴァルタイプが軽量格闘型のハウリンタイプに肉薄された際、巨大なレーザーライフルの銃身を叩き付けて迎撃した件は記憶に新しい。バトル後の勝者アーンヴァルの発言は興味深いものだった。「いつも抱えて飛んでましたから、体が自然に動きました」 この件はいささかイレギュラーな形での運用ではあるが、体に馴染んだ武装と言うのは意識せずとも自然に戦術に組み込まれる。 これを偶然拾った僥倖と判断するか、必然で勝ち得た勝利と判断するかで、あなたの神姫プレイヤーとしての性格が問われる。 さて、格闘武器のカテゴリであるにも関わらず剣や槍などの武器とは在り方が大きく異なる武器がある。 則ちパイルバンカーやドリルアーム等といった機械式格闘武器である。 これらは通常の格闘武器と比較してあまりにも高い破壊力と、それに反比例する低すぎる汎用性を持つ。火薬を炸裂させ、その爆発力を最大限運動エネルギーに変換し装甲を貫くパイルバンカーは、貫くというワンアクションしか起こせない。逆に言えばワンアクションに特化した機構が化け物的貫通力を生み出すのだ。玄人向けと言われる所以である。そしてこれらの性能をフルに引き出すためには武器に対する熟練度や鍛錬よりも、経験が占めるウェイトが大きい。連射が利かず突くしか出来ないパイルバンカーは、「単一武器による連携」が行えない。よって培われた経験に裏付けされた判断力で――― 対戦フロアの隅にて、モバイルのテキストに新たな戦術論の草案を書き初めてからどれくらい経ったのだろう。 「―――マスター、もしもし、マスター? 大変。とうとうウチのマスターの聴覚器官が水平線しちゃったのね」 シルヴィアに課題を出して連戦させてるうちにマスターである自分は新戦術を完成させ、パートナーのバックアップを図ろうと思っていた。が、 「どうしましょう。とりあえず、帰りにささげと重曹、もち米を買わなくてはいけないわ」 どうやら自分は作業に没頭していたようで、連戦を終えたシルヴィアの呼びかけも聞こえてなかったらしい。 「赤飯でも炊こうってか。めでたくも無いのに赤飯を炊きたがるグルメ神姫を持つと無駄に出費がかさんで辛いぜ」 「あら、赤飯は嫌い? めでたくなくても炊きたくなる、私をそそらせる何かがお赤飯にはあるのよ」 「話を逸らすなよ。誰の耳が聞こえなくなるとめでたいって?」 「赤飯が耳の病気に効くってお隣のお宅のおば様が言ってた」 「そりゃお前、赤飯を食べて邪気を払おうって意味じゃないか」 「じゃあマスターの耳に取り付いた邪気をさっさと追い払いましょう。と言うわけで今夜は赤飯がいいわ」 うちのシルヴィアは少し呼びかけに応じないだけでこんな感じになる。 自分が作業に没頭しやすい性質も手伝って最近はしばしば、夕食が無駄に豪華気味になるなのは間違いなくシルヴィアが原因。豪華なのは良い事だが、エンゲル係数の地味な上昇はおれの財布を直撃する。 赤飯は次回の大会で優勝したらな。と手早く話題を切り替える。 「さて、バトルの成績はどうだった」 「マスターの指示が無い点を踏まえ贔屓目に見て五分ってところ。対策の早いところはバッチリ予習してるみたい」 うむむ、と息を漏らすシルヴィア。 対ツガル…ひいては対シルヴィア対策をとっている神姫が多数いる。それはつまりおれ達の優勝によって引き起こされたショックウェーブの規模を物語っている。自分達の行動に対して明確なリアクションが帰ってきた事におれ達は多少の満足を覚えていた。だが同時に、早く手を打たなければいけないと言う焦りも出てきている。大会開催まであと四日を切ってた。その期間で新戦術を確立出来るだろうか。ううむ。 「純正ツガルタイプの戦術論を書いていたんじゃないの?」 調子が悪いときは何をやっても悪く転ぶものだ、今日のところは切り上げて戦闘データから戦術を見直してみよう。と言う意思を伝えるよりも早く、シルヴィアはモバイルの画面を覗き込んでいた。 「剣だのパイルバンカーだの、こんな文章書いちゃって…。やっぱり、いつまでもデフォルト装備では通用しないと思ってるのかしらん、マスター?」 それは途中から本題を外れ、無意識のうちにタイプしていた文章だったが、指摘されてみれば確かに自分の焦りを明文化したようでもあった。 おれ達はツガルタイプが隠し持つ高い性能を証明するために、デフォルト武装に拘り戦闘を続けてきたのだ。だがしかし。 「弱気になってる気がする。こんな状況に対して覚悟は決めてるはずだった。でも、今までは回りに注目されてなかったから勝ち上がれただけで、注目されればこの程度の戦績しか残せないのがおれ達だったのか、って」 「まったく、うちのマスターが、聞いて呆れるような事を」 まったくだ。見事にどつぼにはまってしまっている。 やはり今日のところはさっさと切り上げてしまおう。と帰り支度をした矢先、その男は現れた。 「あなたですね。ツガルタイプのシルヴィア。先日の大会で優勝なさった」 続く 戻る TOPへ 次へ